田部井淳子さん、エベレスト登頂から50年
1975年5月、登山家の田部井淳子さんが女性として世界で初めて、世界最高峰のエベレスト山の頂上に立ちました。田部井さん35歳の時のことです。その後も女性初の世界七大陸最高峰制覇を達成するなど、偉大な登山家として世界中に知られています。

標高8,848メートル、世界最高峰エベレスト山
田部井さんは、福島県三春町の出身。埼玉県川越市には、2016年に癌のため77歳で亡くなられるまで在住されていました。1988年には川越市初の川越市民栄誉賞を受賞されています。
実は筆者が高校生時代、通っていた市内の女子高で講演してくださったこともあったのでした。その頃の私は登山経験もほぼ皆無で、エベレスト登頂ということがいかに大変なことかよくわかっていない世間知らずだったので、当時は田部井さんのことを存じませんでしたが、講演では明るく気取りのないお人柄が伝わってきました。登山に限らず普段の生活で発生する女性特有の悩みへの具体的な対処法なども共有してくださったと記憶しています。
ゆかりの地、日和田山
川越市のお隣、日高市には田部井さんゆかりの日和田山があります。
若い頃には、この山の岩場でトレーニングし、癌発病後はリハビリのために登ったとのこと。
最寄り駅から近く(徒歩15分ほど)、標高304メートルの低山という手軽さ。ルートは途中から男坂・女坂に分かれ、男坂を選択すると急な岩場も体験できます。山頂からの見晴らしもよく、どなたでも楽しめる山です。
登山客専用の駐車場付近には、田部井さんの偉業を記念した碑が設置されています。

田部井淳子さんの記念碑
日和田山は、田部井さんが伝えたかった山の魅力を知る第一歩としておすすめの山です。ただし、人気が高いため、ゴールデンウィークや曼殊沙華のシーズンは混雑するようなので、その点は注意です。
【日和田山データ】
・登山口の最寄り駅:西武鉄道・高麗駅
・駐車場:有料駐車場有り
・所要時間:1時間~2時間
・地図:
周辺には、高麗川が流れ、曼殊沙華で有名な巾着田や出世にご利益があるという高麗(こま)神社などがあるので、これらを下山後のスケジュールに組み入れてもいいですね。
もっと山登りがしたい人には高指山や物見山までの縦走もおすすめです。

奥武蔵自然歩道ハイキングマップ

高麗川の清流。川辺で過ごすのも気持ちいい。
田部井さんの著作、そして最期
田部井さんは山や自然の魅力を伝えるべく、講演や著作などで発信活動も積極的にされていました。講演については、今もYoutubeでいくつか見つかります。著作については20冊程発行されているようで、手軽な登山入門書や山での体験を綴ったエッセイなど数冊を筆者も読んだことがあります。

田部井さんの発信する言葉の中には、ビジネスやスポーツの世界に生きる人々にも響くものがみつかります。困難や恐怖心に打ち克って高みに挑むマインドや、刻々と変化する状況に適切に対応する決断力・チームを安全に率いるリーダーシップなど、多くの人にとって偉大な登山家から学ぶことは多いはずです。
田部井さんはいつも前向きです。それも、厳しい状況を幾度も潜り抜けてきた登山家だけあって、しっかりと現実を見つめ状況を正確に認識した上でのポジティブさなのです。
当時は今よりもさらに女性が自分の能力を発揮することへの風当たりが強かったのではないでしょうか。ご本人だけでなくご家族への心無い中傷もあったことでしょう。それでも、いつも前を向いて最善を尽くし、積極的に生きようとする田部井さんの姿勢には本当に励まされる思いがします。
田部井さんは47歳の時に早期の乳癌を発症し、その時は手術で治癒したものの、73歳の時に、今度はがん性腹膜炎と診断されます。
田部井さんの著書「再発!それでも私は山に登る」には、癌再発後、最晩年の記録が日記形式で記されています。この本に書かれている田部井さんの活動記録は驚異的です。余命宣告を受けた後も、抗がん剤等の治療の合間を縫って地方講演や国内外への登山遠征をされているのですから、そのエネルギーや山を愛する気持ちは大変なもの。とても70代半ばの病に冒された方とは思えない体力・気力そして行動力に驚嘆します。大好きな山からエネルギーを得ていらっしゃったのかもしれません。何か使命感のようなものに突き動かされていたのでしょうか?与えられた時間を、信じるもの・大切なもののために使い、最期まで生き切った人生は見事です。
映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』(監督:阪本順治)
田部井さんの人生が映画化されました!映画のタイトルは『てっぺんの向こうにあなたがいる』、今年の秋(2025年10月31日)公開です。
田部井さんの著書「人生、山あり時々谷あり」をベースとして、田部井さんをモデルとした登山家を演じるのは吉永小百合さんです。ぴったりですよね。真摯に挑戦していく生き方・芯の強さ・温かなエネルギーなど、小百合さんと田部井さんには多数の共通点がある気がします。
元気がでるような映画になっていると期待しています。公開されるのが楽しみ。

映画主演の吉永小百合さんと旦那さん役の佐藤浩市さん
そして、なんと田部井さんの青年期を演じるのはのんさん!これも嬉しい。のんさんて田部井さんのような明るいガッツもあるし、娘時代の吉永小百合さんとも少し似ている気がしませんか?素晴らしいキャスティングです。連ドラ『あまちゃん』の頃から経験を増してたくましく成長しているに違いない彼女が、若き日の田部井淳子さんの燃えたぎる情熱をどのように表現しているのか、こちらも注目です。