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小江戸日記

小江戸川越の情報や話題、日々のつれづれを綴っていきます。

旅に出たくなる本3冊

暖かくなって花盛りの今、旅行するにもいいシーズンです。今日は、最近読んだ旅に出たくなる本を3冊ご紹介。私も旅に出たい気持ちがムクムクと・・・。

 

『社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!』ちきりん(大和書房)

本書では、今や人気ブロガーである著者ちきりんが学生時代から20年以上にわたって訪ねた国々で感じたこと、社会常識やものの見方の日本との相違点などが記されています。

たとえば「伊藤博文がお札から消えたワケ」というエピソード。ここでは紙幣から見える世界政治の様相が記されていてなるほどと深く納得しました。1984年、日本で紙幣デザインが一新され千円札の顔が伊藤博文から夏目漱石に変更されました。これは、その3年後に開催が決定していたソウル五輪のためだったのでは、というのがちきりんの説。伊藤博文は日本による韓国支配の中心機関である韓国統監府初代統監。韓国に日本人もたくさん訪れるであろうソウル五輪では、伊藤博文の千円札が韓国人の目に触れる機会も多くなるはず。韓国民の感情を刺激して余計な摩擦を生まぬよう配慮して、紙幣デザインは変えられたのだとちきりんは想像しているのです。文化人や科学者というのは政治的対立を生みにくいので、そういう問題に敏感にならざるを得ない国(欧州もそう)の紙幣には起用されるのではとも考察しています。一方、中国の紙幣は毛沢東アメリカ合衆国紙幣にはワシントンが使用されている例を挙げ、ある程度の強国でなければ政治家を紙幣には載せられないという指摘にも納得させられました。

まあ、こんな具合にちきりんが世界を旅しながら自分の頭を使って考えたことがこの本にはたくさん記されているのです。借り物ではない生きた知識が、旅を通してちきりんの身に血肉化されていることがよくわかります。

 都市国家として凄まじい生存戦略を展開するシンガポール、ホスピタリティのない観光資源に恵まれすぎの南欧諸国、お金はあっても独裁政権下で不自由を強いられる希望無きビルマ、などなど。この本に紹介されているちきりんが実際に旅した国のエピソードを読むと、実に様々な価値観やものの見方が世界には存在するのだということがわかります。そして、政治というものがいかに国民の生活にあまねく浸透し、人の運命を支配するのかを改めて知ることができます。

 ちきりんの文章は平易で誰もが理解できるように書かれているので、学生の方にも是非読んで貰いたいな、と思います。

 

 『街ものがたり』吉永小百合講談社

女優・吉永小百合さんの旅への想いや実際旅をした経験を語ったラジオ番組「吉永小百合・街ものがたり」の内容をまとめた本です。吉永小百合というフィルターを通して世界の街の姿、その個性や魅力が語られています。

やはり女優という職業柄、映画の話題が多く登場します。映画の舞台となった街を旅するというのもひとつの旅のスタイル。街の魅力が映画をより印象深いものにすることもあるのでしょう。

それから、目で見るものだけではなく、漂う香りや踏みしめる土の触感、土着の哀切な音楽など感覚的な記述が多くあり、五感で街を感じているところがとても印象に残ります。特に、食に対して好奇心旺盛な方で各地の料理が具体的に生き生きと描写されています。ビールや茅台酒(マオタイチュー)などお酒に関する記述もありました。美味しいものを頂くのは旅の最大の楽しみのひとつですものね。

奇をてらわない素直な表現が読んでいて気持ちよく、自然に旅に誘われるような気持ちにさせられる1冊です。

 

 『弱いつながり 検索ワードを探す旅』東浩紀幻冬舎

著名な思想家による人生論。

「私たちは考え方も欲望も今いる環境に規定され、ネットの検索ワードさえもグーグルに予測されている。環境を意図的に変え、グーグルの検索ワードを裏切るために有効なのが、身体の移動、つまり旅であり、弱いつながりなのだ…」。

そう、我々は思った以上に環境に規定されている生き物なのですよね。そして、その環境下でしがらみに絡めとられ、身動きがとれなくなっていく・・・。それはネット環境でも同じ。フェイスブックはつながりを強める方向で働くことは私も実感しています。そして、罠をかけているかのように一方向に我々を誘導する検索サイト。お仕着せの欲望。この社会に生まれて果たして「かけがえのない人生」は可能なのか?これはひとつの実験的問いかけです。

現在の自分に「偶然性」と「ノイズ」を入れる一つの方策として、著者は「旅」を挙げています。強制的に環境を変えることにより、検索する言葉も違ってきます。興味を持つ対象も感じ方・考え方も変化するといいます。

旅によってもたらされる情報は膨大です。視覚による情報だけでなく、吹く風、温度、湿度、匂い、味・・・。そこにはグーグルのアルゴリズムをもすり抜ける出会いがあるでしょう。身体の移動でしか認識し得ないこと、たくさんあります。そして旅は一期一会。その時その場所で出会える人も自然もそして自分も、皆変化します。自分が行くことで、その旅先にノイズを入れることもありうる話だと思いました。

賛否両論ある本ですが、チャレンジングな試みとして私は興味深く読ませてもらいました。バタフライの羽ばたきがやがて遠い国の竜巻を引き起こすかもしれないように、日常に一瞬入り込んだかすかなノイズが我々の生き方を変えてしまうかもしれません。旅は偶然性へのひとつの賭けとも言えますね。